診察室に入ると、先生がわざわざ立ち上がって迎えてくれた。 この先生、患者を迎えるときは必ず立って挨拶をしてくれる。なんて紳士な人なんだ。 (この穏やかな笑顔に、少しだけ救われる……)
「あの……実は……」 一昨日の地獄のような痛み、発熱、そして昨晩「何かが弾けて膿が出た」ことを告げる。
「そうですか……。それは辛かったですね。じゃぁ、とりあえず診てみましょう」 先生は、今後の見通しには一切触れず、すぐに患部の診察へ。 (痔瘻だと診断されるのが怖かった私は、「もしかして痔瘻じゃない可能性も!?」と、一縷の望みを抱いていた)
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ここで少し余談だが。 実は、膿が出た後、傷口にあてるガーゼが手元になく、なんと「使い捨てマスク」で代用していたのだ。 さすがに医者に診せる段になって、そのままでは恥ずかしいので、紐の部分はハサミで切っておいた。 ありがとう! ガーゼマスク。君のことは忘れない。
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前回(初めての肛門科)と同じく、ズボンを下ろして診察台へ。 先生におしりを向けて横向きになり、膝を抱えるあのポーズ。屈辱だ。
すると、あの紳士だった先生は、まだ痛みの残る私のケツを容赦なく開いた。 「ほぉ、ここですね。ちょっと痛いかもしれませんが……」
そう言うが早いか、肛門の周囲を指でグイグイと押してくる。 「い、痛いっ……!」 一番痛いところを正確無比に狙い撃ちされている気分だ。
そして、背中越しに衝撃の言葉が投げかけられた。
「傷口が小さいので、切開して膿をちゃんと出す必要がありますね」
(……えっ? せっかい? 切開って……手術ってこと!?)
頭の中が真っ白になる。 何の知識も心の準備もない私は、「じゃ、じゃぁお願いします……」と、震える声で答えるしかなかった。
「では、準備しますのでそのままで。ちなみに、歯医者さんで麻酔とかしたことありますよね?」 「は、はい、あります」 「それで、具合が悪くなったこととかあります?」 「い、いいえ、大丈夫です……」
そんな事務的なやり取りの背後で、カチャカチャと金属音が響き、着々と何かの準備が進んでいく。 (背を向けているので、何が行われているのか全くわからないのが余計に怖い!)
この時、私は悟った。 はぁ、ついにこんな事になっちまったか……。 まさか、いきなり手術になるなんて……笑えないな……あぁ……。
まな板の上の鯉ならぬ、診察台の上のケツ。 観念して、その時を待つしかなかった。
(つづく)


