会社の最寄り駅にあるクリニックへ向かった。 (ちなみに、現在はすでに閉院してしまっている。私の痔の歴史を知る場所が一つ消えたことになる……)
そこは「肛門科専門」ではなく、町のお医者さんといった風情。 待合室には親子連れやお年寄りもいて、自分が普段通っている内科と同じような牧歌的な雰囲気だ。
ただ、待合室は狭い。 診察室との仕切りはカーテン一枚(だった気がする)。 「中の会話、丸聞こえじゃないか?」 そんな不安がよぎる。
名前を呼ばれて診察室に入ると、初老の優しそうな先生が待っていた。 まさに「赤ひげ先生」といった雰囲気で、少し安心する。
症状を話すと……来た。 避けては通れない道。そう、触診だ。
「じゃあ、ズボンを下ろしてベッドに横になってください」
言われるがままにケツを出し、ベッドの上で横向きになる。 先生におしりを向ける、この無防備な体勢。 何度やっても慣れないが、この時は正真正銘の「初めて」だ。羞恥心がMAXに達する。
背中側なので何が起きているかは見えない。 手慣れた気配だけが伝わってくる。先生が尻の肉をグイっと広げる。
すると、ヌルっと指が肛門に挿入された……。
(……ん? 意外と痛くないぞ?) これなら耐えられる。
一息ついて終わりかと思いきや、背後で「カチャカチャ」と無機質な金属音が鳴る。 何だ? 何を取り出したんだ?
次の瞬間。
ぐぉっ……!!
これは痛い!! 指とは違う、硬い「器具」がねじ込まれ、そこからグググっと広げられる感覚! 内側からこじ開けられるような鈍痛が走る。
「はい、終わりですよ~」
診察自体はスムーズだった。 痛みはあったものの、それ以上に「お医者さんに診てもらった」「確定診断が出る」という安堵感が押し寄せる。
診断結果は詳しくは覚えていないが、恐らく「裂肛(切れ痔)」と言われた気がする。
処方箋をもらい、調剤薬局で薬を受け取って会社へ向かう。 お尻に違和感を抱えつつも、心は少し晴れやかだった。 これが、私の長い長い痔主(じぬし)生活の幕開けとも知らずに……。
(つづく)

